西表島のマングローブ

オヒルギ 仲間川上流のマングローブ林 ヒルギダマシ
メヒルギ マヤプシキ
ヤエヤマヒルギ ニッパヤシ
ヒルギモドキ
仲間川マングローブ地帯 (仲間川展望台より)
    マングローブは熱帯、亜熱帯地方の海岸、入江、河口泥湿地で、満潮時に海水に浸る場所に生育している樹木類の総称です。
西表島のマングローブは4科6種で構成されており、特に東部の仲間川のマングローブ林の面積は108haにも及び、「仲間川天然保護区域」と国の指定を受けています。海から陸地に向かって、または、河口から上流へかけて主にマヤプシギ→ヤエヤマヒルギ→オヒルギの順に分布しています。
 特殊な環境に生育するため、一般の植物とは異なった形質を備えており、葉の表面は水分の蒸発を防ぎ、細胞の浸透圧も高い構造となっています。多数の支柱根を出し自身を支えているほか、呼吸根や膝根を出すなど木の形質にも特徴があります。
 マングローブ植物と他の植物との区別は明瞭ではないのですが、付随的な構成種としてサガリバナ、オオハマボウ、ナンテンカズラ、リュウキュウキョウチクトウ、クロヨナ、サキシマスオウノキ、アダンなどがあります。

マングローブの不思議
潮の干満で水中に没してしまうこともあるので、その環境に適応できるように、自らの根や種子に、様々な工夫をしています。
たとえば酸素の少ない海中の泥の中に根をはっても効率よく酸素を取り入れられるように特別な根(呼吸根や支柱根という)があるもの、塩分を体の外に出すシステムを備えるもの、水の中に落ちても、着床後に発芽する種(胎生種子)ができるもの等、色々と特徴があります。
 メヒルギは支柱根がないかわりに、幹の根元が広くなっています。これはサキシマスオウノキで有名な板根と同じ呼吸根の一種です。木肌はずいぶん赤みがかっています。ヤエヤマヒルギの葉がいわゆる葉っぱ型なのに比べ、メヒルギは葉の先が丸くなっています。オヒルギにも支柱根はなく、膝のような根を周囲の地面に突き出しているのが特徴です。葉はヤエヤマヒルギとよく似ていますが先端に針のような突起がありません。
日本には、オヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギ、ヒルギモドキ、ヒルギダマシ、マヤプシキ、ニッパヤシの7種類があり、西表島にはその全ての種類が生育している。ヒルギダマシは、東部では与那良川から仲間川にかけて、西部では船浦湾、浦内川、与那田川で見ることができます。マヤプシキは東部に集中的に分布しており西部ではウダラ川で1株見られるだけ。ヒルギダマシもマヤプシキもマングローブの中では最も海よりに生育し、マングローブ林が海へと広がる上でのパイオニア的役割を担っています。

ミナミコメツキガニ
 このカニは集団を作ることから軍隊ガニとも呼ばれていますが、人に驚いて逃げる様子は、軍隊というよりも幼稚園児といった可愛らしさがあります。捕まえると脚を折りたたんで玉のようになり、放すとすぐ泥の中に潜ります。本来の餌場を離れ、集団で餌をとる行動はヒメシオマネキ、オキナワハクセンシオマネキなどでも見られます。


ングローブは自然のフイルター
 マングローブは陸から流れ込む泥や土、栄養分を沢山含んだ水を受け止めるフイルターのような役割を持っています。
土地開発で流れ出た泥や土などがサンゴの海に直接流れ込むとプランクトンが大量に発生したり、透明度が落ちてサンゴに必要な光が届かなくなったりします。サンゴを中心として成り立っている海の生態系を変えないように、マングローブはしっかりと余計なものを受け止めています。
それと同時に、荒い波で海岸がけずりとられるのを防ぐ役割もあります。
 マングローブの林には沢山の生き物が棲んでいます。木々の上には哺乳類や鳥類、爬虫類、両生類が住み、水中には、エビやカニ、貝などが暮らします。張り巡らされた呼吸根や支柱根は多くの稚魚が安心して暮らせる大切な空間を提供してくれます。
 マングローブは、黙々と根を張って大自然を守っているのです。


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